Rock_ozanari’s diary

ノージャンル。音楽系はまあまあ多いです。

先日雪が降り積もった。私が今の住まいに越してきてから初めての積雪となった。元々住んでいた場所と電車で1時間程しか離れていないにも関わらず、気温は5℃程も違う。

雪の降った日、私は友人からの飲みの誘いを快諾し新宿へと繰り出した。
家を出た時、周辺には雪が積もっており、非常に歩きづらかった。どうにか最寄りの駅まで辿り着き、小一時間電車に揺られ、大迷宮新宿駅へ到着した。
いつも通り迷子になりつつようやく外に出ると、其処にはもう雪は殆ど残っていなかった。往来の激しい道には、片隅にすら雪は残っていない。しみじみと、都会では積雪の寿命は短いのだと感じさせられた。

子供の頃、雪が降るのはたまらなく喜ばしいことだった。童謡の犬のように庭を駆け回り、友人と雪合戦やカマクラ造りに勤しんだ。
大人になった今、雪というのは迷惑な物でしかなく、寒さを助長し、白に反射した陽は目に眩しく、足を取られぬよう背を丸めて慎重に歩く。麻痺した交通網、すし詰めの電車、怒鳴る客と怒鳴られる駅員。

正直に言えば、ある程度大人に近づけば、日常に雪が降ることを喜ぶ事は殆ど無い。子供の頃の喜びは何処かへ行ってしまった。ただ、まだ踏み荒らされず、排気ガスに汚されもしない積雪を、綺麗だなと思える心を失ってしまった人はそうそういないだろう。
友人とお開きにし、ほろ酔いで自宅へ戻る道すがら、そんな事を考えた。新宿から小一時間電車に揺られ、最寄りの駅に到着すると、まだ雪は多く残っていて、ここは人が少ないな、となんとなしに思った。

宇宙刑事ギャバン

若い人(私もだが)だと知らない方も多いかもしれないが、宇宙刑事ギャバンという特撮物がある。私は、記憶が正しければ小学生の頃の夏休みにテレビで観た。私は特撮が割と好きで、今でも酒を片手にウルトラマン仮面ライダーを観る事がある。子供の頃は戦闘シーン以外はどうでも良かったのだが、今になってみるとむしろ戦闘シーン以外が面白く感じる。有名なところでは、ウルトラマンセブンで、セブンがメトロン星人とちゃぶ台を挟んで対話するシーンがある。調べれば出ると思う為内容は省くが、とにかくメッセージ性が強く、子供の頃とはまた違った視点で観れるようになるとなかなか興味深い内容の物が多いのだ。

特撮の曲に関しても同様で、聴く人によれば「ダサい」のだが、呆れるほどストレートなメッセージが心地よい。
宇宙刑事ギャバンの歌詞で言えば、「若さってなんだ 振り向かない事さ 愛ってなんだ 躊躇わない事さ」と、なんだか大事な事を改めて気づかせてくれたような気持ちになるのだ。

特に「若さってなんだ 振り向かない事さ」の部分は個人的にはなかなか衝撃で、もちろん常々思っていた事ではあったのだが、子供の頃に慣れ親しんだ物を大人になってから再び触れて指摘されると感慨深い物がある。

近頃の私は振り向いてばかりで、まだ年齢的には若い世代ではあったとしても、随分歳をとったものだと感じる。「あの頃は楽しかった」が思考の7割程を占めている。
もっとも私にとって「楽しかったあの頃」というものは殆ど無いのだが、その僅かな時間を反芻してしまっている。

私は傍目には随分と辛い人生を歩んできた。「俺がお前ならとっくに自殺してるよ」と何人から言われたかわからない。しかし、私は私の人生に概ね満足している。一瞬でも楽しかった過去があるのはそれだけで幸せだ。気兼ねなく話せる元同級生のメンバーや、「たまには連絡しろよ」と言ってくれる歳上の友人、辞めた今でも飲み会に誘ってくれる学生時代のアルバイト先の後輩。少ないながらも、自分を取り巻く環境はとても暖かいものだ。そんな彼ら彼女らとの思い出を振り向く事が若さからの衰退であるのなら、私はただの歳をとった子供で良い。

なんでも無い事で(今回は宇宙刑事ギャバンの曲を聴いた事で)自分を見つめ直す機会が自然に発生するのは、子供よりは長く生きてきた大人の特権なのかもしれない。
良くも悪くも自分を見つめ直すのに時間はいらない。きっと、過去も未来も現在も大切にして良いのだと思う。大切にするべきだ、とは決して言わないが。