東京

東京が嫌いだ。

見渡せば疲れた顔の人と、無機質なビル。
巨大な墓標のようなそれは、幾度となく、自分は死んだのだと思わせる。

この街は要らない物がなんでも手に入り、欲しい物はなに一つ手に入らない。

自分のペースで歩く事も出来ない。傘を広げれば誰かにぶつかる。居酒屋と風俗店の呼び込みには、会釈すらしない。

流行の物がなんでも揃う街を誰もが楽しそうに歩いているのを見て、どうして自分は楽しむ事が出来ないのかと少し焦る。焦りは足を早め、早めた足は人の壁に阻まれる。

みんなが楽しそうで、みんなが疲れている。
人の声が、電話越しに叫ばれているように大きく、不鮮明に、ごちゃ混ぜになって聞こえてくる。路肩の吐瀉物や、そこにいるのが当たり前になっているホームレスは、既にこの街の一部だ。

ここに居たくないという焦りと、ここに居たいと思えない事に対する焦りが、いつだって僕を責める。

何かが違う、何かがおかしいという思いを抱えながら生きるのに、どれくらいの時間が経てば慣れるのか考えるのはもうやめた。

東京は僕を責める。いつか、絶対に出て行く。むしろ今すぐ出て行きたい。幾度となくそう思ったが、それを邪魔する大切な物がこの街にはありすぎる。