音楽とバンドの話


今ある交友関係の9割以上が音楽を介した物だと何気なく気付く。

高校生からの数少ない友人は今組みつつあるバンドと、組んでいるユニットのボーカルだし、大学生からの数少ない友人はかつて組んでいたバンドのギターだったり、ベースだったり、ドラムだったりする。いつの間にかに仲良くなって、ちょくちょく飲み屋でくだらない話で盛り上がる彼ら彼女らも、対バンした相手だったり、お客さんだったりする。

俺にギターを勧めて、教えてくれたのは現在ボーカルの高校からの友達で、高校を卒業して大学に入学するまでの、社会的に何者でも無かったあの時間に、一緒に近所のハードオフまで自転車で駆けた。道中、彼は軽く車に轢かれて、自転車のタイヤがひしゃげた。怪我は無かったから、どうにも愉快だったのを覚えている。

ハードオフで47000円の赤いストラトキャスターと、フェンダーの小さなアンプを買った。趣味が読書くらいしか無かった当時の俺には充分出し渋ってもおかしくない金額であったが、何故かすんなりと買った。ギターの種類も、音の事も何も知らなかった俺は、かっこいいから赤いストラトキャスターを買った。YUIと同じギターだ〜なんて言いながら、赤いストラトキャスターを買った。後から知ったがYUIのギターはテレキャスターだった。

ギターを買った足で友人と2人、彼の家に戻り、ギターを教わった。
Cコードすら満足に鳴らせない俺をよそに、彼はスタジオライブをやろうと言い出し、曲はT-REXの20th century boyと、バンプオブチキンの彼女と星の椅子に決まった。歌も下手で(というより音感が致命的に無い)、ギター初心者の俺がギターボーカルで、彼がベース、今じゃ連絡先も知らない同級生がドラム。今思えば恥ずかしい曲と歌詞のオリジナル曲も作った。

初めてのスタジオ練習は、高校の前にある公民館。しょうもないアンプとしょうもないドラムが置いてある、広さだけは充分な、今じゃ絶対使わないような安いスタジオ紛いの青い部屋

ドラムの4カウントから、沢山練習したEコードの有名なリフ。初めてギターとベースとドラムを一斉に鳴らしたあの瞬間、「これだ!」と思ったのを今でも覚えている。それなりに技術と経験の付いた今ならなにが「これだ!」なのかわからない程酷い演奏だったろうが、とにかく当時の俺を夢中にさせるには充分だった。
20th century boyは、今でも大切な曲だったりもする。

その後数週間でライブをして、結果は惨憺たる物だったと思うが、どうしようもなく楽しかった。それだけは確かだった。

それまで流行りのジェイポップしか聴いていなかった俺は、たくさん音楽を聴くようになった。ミッシェルガンエレファント、イエローモンキー、ブランキージェットシティー、クラプトン、ジミヘン、ビートルズ、パープル、ゆらゆら帝国ナンバーガール、レッドツェッペリンイーグルス、クイーン、ユニコーンピロウズ山崎まさよし斉藤和義布袋寅泰、ウィルコジョンソン、イエス、ピンクフロイド、ジェフベック…挙げ始めるとキリが無い。

ジャズマスターというまあまあ最悪なギターを買った。理由はかっこいいから。なにも成長していない。でも、それで良いんだと思った。
オリジナルバンドも何度か組んで、何度か解散した。軽音楽部で一度のライブ限りのコピーバンドも何個もやった。一回のライブで8バンド組まされて泣きそうになりながら斉藤和義のギターソロを練習した事もあった。全然弾けなかった。

お金を貰ってギターを弾くこともいくらかあった。
特別上手い訳ではなかったけれど、「君のギター好きだよ」と沢山言ってもらえた。俺も、俺のギターを好きになった。ジャズマスターは最悪な音がしたが、好きだった。何度も壊れて、何度も直す内に、買った時より金をかけている事にも気付いた。一弦のチョーキングをすると音が切れる程フレットが磨り減った。

ギターを始めて6年目。どれだけギターを弾いたかはわからないし、時間の割には大して上手くもないと思う。それでも楽しくて、沢山人との関わりも出来た。ライブハウスで最年少な事が多かった頃から、すっかり中堅か、そのやや下くらいになった。
自分より若くて、明らかに才能のある人も沢山見た。
対バンした事のあるバンドは、俺が就職をして、バンドが解散して、ブラックで仕事を辞めて、また就職して、なんとか生活している間に、ダムチャンネルで流れるようなバンドになっていた。

俺が就職して、ギターを弾く頻度が減って、ライブもすっかりやらなくなった時、「お前からギターとったらなにも残らないじゃねえか!」と言ってくれた人がやっているバンドは、タワーレコードで全国流通のCDを出した。

俺は多分認められたいんだ、と最近思う。ギターで、ではなくてバンドで。全然興味がなかったのに、あっという間にハマって、生活の殆どがそれになって、色んなものを失って、色んなものを得たバンドで。

いい歳して何を言ってんだって、そりゃ自分でも思うけど、どうせ張り合いのない日常なら、どこかに張り合いを作らないとどんどん腐って行ってしまう。それが悪い事かはわからないけど、少なくとも俺はそうなりたくはなくて、いつまでだって楽しくいたい。
青臭くっても構わないから、もう少し自分の好きな事に必死になろうって、最近思うようになった。

大人になるってどういう事か知らないけど、多分音楽をやっていなかったらもうちょっと色んな事に諦めながら楽に生きられたんだろうけど、俺はまだ大人になりきれなくて、テレビで歌ってる好みじゃないバンドには絶対負けるかって、そんな事を思う訳です。
恥ずかしいね。そんな恥ずかしさを俺は愛したいから、俺は音楽をやるんだろうな。

いい加減大人になれよって大人が言う。だから大人は嫌いだよ。大人が大人になれって俺に言うから、俺はいつまでも大人になれないんじゃないかって、そんな事をいつまでも言っていたいよね。