Rock_ozanari’s diary

ノージャンル。音楽系はまあまあ多いです。

夏の終わりとミサイルと病室。

9月はまだ暑いし、だいたい10月もなんだかんだで暑い日が続いて、いったい夏の終わりってやつはいつなんだろうかと時々考える。

見上げた緑が紅や黄に染まった頃はもう秋と言っても良いかもしれないけれど、そこに至るまでの半端な季節はいったいなんだ。
俺はやっぱり夏っていうのは8月31日でおしまいだと思います。宿題終わったかみんな。大人は8月31日まで続く夏休みなんて無いから、急に慌てなくても済むんだ。いつも慌ててるからね。

8月29日にミサイルが飛んで、Jアラートなるものが鳴った。俺は仕事が休みだったからその警報を聞くことなくスヤスヤと眠りこけ、昼過ぎに起きて、友人から届いていたLINEでその事実を知った。
ミサイルがもし本当に(通過したのは北海道みたいだけど)東京に落ちてきていたら、きっと俺は死んでいたんだろうな、と他人事のように思いつつTwitterを眺めていると、ブロック塀の陰に身をひそめる老人や、校庭でしゃがみ込む子供達の写真が流れてきた。

その写真にぶら下がるリプライには「そんなことしても意味無いだろww」とか「それで身を守れると思うなんて日本人は馬鹿だ」と言った否定的な内容がぶら下がっていたけど、俺は生への執着ってすげえなって思った。

だって俺は多分、諦めるから。別に死にたい訳じゃないし、死ぬのが怖くない訳じゃない。でもミサイルが発射されて、警報が鳴って、近所から放たれた死が命中する迄の僅かな時間でとっさに身を守る瞬発力と判断力。そういうのが俺には足りていない気がする。

「うわー、ミサイル飛んで来るんだ。やべー。会社休みになるのかな」って思ってる間に死ぬ。きっとそう。子供の頃に何度もはだしのゲンを読んだけど、多分普通になにも出来ずに死ぬんだと思う。

とにかく、実際のところミサイルは日本には当たらなかった訳で、だから今日も平和に会社や学校が休みにならない事に文句を言ったりして、それって凄く平和で良いなって思った。
本当はミサイル飛んできてる時点で平和じゃないっていうのはもちろんわかってるんだけど、とにかく今日理不尽にまとめて命を奪われる事は無かった訳で、だいたいそれで良いんじゃないかなって思った。

父親は自殺しそうで強制入院させられて、友達は肺ガンだし、俺は利き手が動かせなくなるかもしれなくて、それでも今日は友達とスタジオに入って遊んで、居酒屋でビール飲んで餃子を食べて、生きてたら嫌な事たくさんあるけど、今日みたいな1日ならだいたいそれで良い。

夜に外に出てみれば少しは涼しくなっていて、夏ってやっぱり終わるんだという気がしてる。
もう夏休みの宿題に苦しむ事はないけど、あの日提出出来なかった宿題にまだ囚われているような感覚。昔のクラスメイトに再会してみれば話題は仕事と税金と結婚と最近脂っこいものが苦手になったって事で、伸びた髪や広くなった肩幅を寂しく思ったりもする。ああ、それは俺の知らない君達だ。

俺たちはもう誰かの見舞いや結婚式のような大きな理由がないと会わない関係になってしまったし、確実に大人になってる。
学区外に出る事を恐れて寂れたスーパーよりも向こうには絶対に寄り付かなかった俺たちはもう何処へだって行けるし、一つの場所から逃れられなくもなっている。
さくま書店で買ったパチモンのベイブレードの事だって多分思い出にしかなってなくて、俺を置いて大人にならないでよなんて口が裂けても言えなくて、記憶の糸を手繰って目の前に落とした楽しかった思い出を、清潔な病室で語り合う事にいったいどれ程の意味があるんだろう。
それでも夏は終わるし、俺は明日も仕事に行くよ。