Rock_ozanari’s diary

ノージャンル。音楽系はまあまあ多いです。

お客さんありきの音楽


音楽には大まかに2種類あって、1つは「お客さんを意識した音楽」で、もう1つは「自分の信じるものをひたすら追究する音楽」です。

両者に良し悪しも優劣もなくて、単に好みの話でしかないのだけれど、メジャーで活躍しているようなバンドから、客0のライブハウスで大金払ってライブしてる地獄指数の高いバンドまで、だいたいその2つのどちらかに分類されます。

俺個人の意見というよりも世間でよく言われていることだけれど、YUIの曲なんか例に出すとわかりやすい。初期の頃のフィールマイソウルなんかは完全に「自分の信じるものをひたすら追究する音楽」で、後期(中期?)のチェリーなんかは「お客さんを意識した音楽」です。

客を意識しているのはYUIって訳じゃなくて事務所なのか大人なのかはわからないし、俺はフィールマイソウルの方が圧倒的に好きで良い曲だと思っているけど、やっぱり世間的に良いものとされるのはチェリーだと思います。実際チェリーはヒットしたし、俺の世代だと知らない人の方が珍しい。フィールマイソウルはチェリーと比較すればそんなに有名でもないし、YUI好きな人と話しても「ああ、やっぱ初期だから微妙な曲だよね(笑)」とか言われる。ぶち殺すぞ。指先で送る君へのメッセージ。

俺もずっと好きなように作るのが一番格好良いよね!自分の信じるものをひたすら追究する音楽の方が素晴らしいよね!って思っていたし、それ自体に多分間違いはないんだけど、最近はちょっと違くて、自分の信じるものをひたすら追究しつつもお客さんを意識しないといけないよな、と思い始めた。

理由としては、お客さんという生き物は絶対数として音楽に詳しくない人の方が多いから。
「音楽に詳しい」のボーダーをどこに置くかというのは戦争しか生まないので避けるけど、逆に音楽に詳しくない人をどう分類するかって言ったら、ミュージックステーション紅白歌合戦しか観ない人。もしくはそれ以下。これに関してはまあ、この辺で良いんじゃないでしょうか。便宜上ね、便宜上。

で、俺が言いたいのは、バンドマンの人、各々のこだわりがそういう人に伝わると思いますか、という話。
小さいライブハウスにアマチュアバンドのライブ観に来る人なんて音楽に多少詳しい人しか来ねえよ!という声が聞こえてきそうだが実際はそんな事もなく。例えば初ライブに来てくれる人とか、Twitterに音源をアップした時に聴いてくれる人って、全部音楽に詳しい人とかバンドマンとかだけではないよね。
ゼミの友達とかバイト先の友達とかじゃないですか?ライブに来て「なんかよくわからないけど凄いね!音がデカくて!私応援するね!」って言ってそれ以降2度とライブに現れない人とかじゃないですか?Twitterにアップした音源を1回は聴いて「かっこいいね!」とリプライして2度と再生しない人じゃないですか?
それは全然悪い事じゃないし、本当善意の塊でありがたい人たちです。でもそういう、音楽に詳しくなかったり、そもそもそんなに音楽好きじゃなかったりする人達に「このギターソロでわざと音を外して際立たせてるんだよね(笑)」とか説明して、伝わりますか?
「そうなんだ!凄いね!ギターソロってなに?間奏?」ってなるじゃないですか。なるんですよ。音楽聴いてなかった頃の俺がそうだったし。アウトロでギターソロ1分とか弾いてる曲とか、歌が終わった時点で飛ばして次の曲言ってたし、多分それがギターソロとも認識してなかった。ボーカルの人なんで歌わないのかなとか思ってた。
多分日常的に音楽聴かない人とかはジェロの『海雪』で裏に結構な頻度でスラップ入ってるのなんて気づきもしないし、スラップってなに?どころかベースとギターって同じじゃないの?って世界で、俺たちが音楽をやる時の入り口にはいつもそういう人達がいるんです。

で、そういう人達が何を聴いてるかって言うと、結局歌メロと歌詞な訳です。今でこそいろいろ音楽聴いてる俺だけど、音楽を聴くようになった最初の入口ってバンプオブチキンだったんですよ。バンプオブチキンって、ここは主観が入るけど歌メロも歌詞もめちゃくちゃ良くて、俺はそこで初めて音楽を好きになったんですけど、別にそれでバンドを好きになった訳ではなかった。俺が好きだったのはバンプオブチキンというバンドじゃなくて、バンプオブチキンという歌メロと歌詞だったから。

音楽を普段聴かない人にとって、楽器なんてものは飾りで、弾けたら、叩けたらもうそれだけで凄いし、ぶっちゃけ無くても構わない。ボーカルがいたらそれでオッケー。バンプオブチキンじゃなくて藤原基央とバックバンド。愉快な仲間たち。かなりシビアだけどそういう人達と向き合わなくちゃいけない。バンプオブチキンのフレイムベインというアルバムは完全に最高のアルバムだけど、今聴いたらやっぱり演奏はめちゃくちゃ下手くそだと思う。でも当時はそれで良かった。なぜなら演奏なんて聴いてないから。アルバム違うけどエバーラスティングライとか、「間奏長くね?」つって飛ばしてた。死ねばいいのにね当時の俺は。

というわけでお客さんの目線に立った時には結局歌メロと歌詞が大事だよって事になるんだけど、俺みたいにしょっちゅう小さいライブハウスでアマチュアバンドのライブを観る人は、結構歌詞を聴く事を諦めている人が多い。ライブハウス自体の音響の問題だったりPAの腕だったり、そもそもバンドやボーカルの力量の問題だったり理由は色々だけど、基本的に歌詞って聴きとれません。バンド演奏をバックに熱いMCしてるワンオク好きそうなボーカルとかよくいるけど、何言ってるか全然わからない。マイクの音量を上げ過ぎるとハウリングが起きるし、基本的に声のボリュームは楽器のボリュームには敵いません。
でも意外な事に、音楽に詳しくない人ほど、そういう場に赴かない人ほど、歌詞を聴き取ることを諦めてない。聴こえなくても聴こうとするし、ライブが終わって歌詞を褒められたり、こういう意味?って確認されたりする。まだ耳が致命的なダメージを受けてないのかもしれないけど。

バンドの種類によるのかもしれないけど、バンドにとって基本的には歌詞って武器です。その武器を全面に押し出す、聞きとられるような演奏をする、というのは冒頭の両者両方をとった方法です。なにが正しいかなんてわからないけど。

後は、お客さんを意識するというのがどういうことかイマイチピンとこないよ、って人は岡崎体育とか聴いたら良いと思います。
ミュージックビデオとか感情のピクセルなんかはよく出来てる。音楽詳しくない人も詳しい人もちゃんと聞けるものです。

ミュージックビデオなんかは完全にタニザワトモフミの『くたばれJPOP』だし、感情のピクセルは音楽詳しくない人が聴けば格好良い曲なのに歌詞がヤバい面白い曲だし、詳しい人が聴けば「あー、はいはいこれね、わかるわかる確かにね」となる曲です。彼が自分のやりたいことをやってるのかは知らないけど、お客さんを意識するというのは、つまりああいうことでしょう。別に笑いの意味でウケる曲を作れってわけでは無くてね。

なんかとりとめも無くなっちゃったけど、自分のやりたいことだけやって売れたら最高だけど難しいから入口広げる努力くらいはしておきたいよねって話と、あとはフレイムベインオブチキンは平成のロックンロールだぜって話です。藤くん結婚してくれ。

それでは。