Rock_ozanari’s diary

ノージャンル。音楽系はまあまあ多いです。

「本気で音楽やりたいならプロになんてなっちゃ駄目だよ」

メジャーデビューしているバンドのボーカルに「本気で音楽やりたいならプロになんてなっちゃ駄目だよ」って言われたことがある。
やめてよそんな事を言うのは。若者に希望を見せてよ。プロって輝かしい舞台であってよ。
まあ俺もう24歳だし、別に若くもないんだけど、それを聞いた当時はまだ若くて、未来はそれなりに明るかったし、音楽に多少なり希望を持ってた。

先に言っておくけど、メジャーデビューしているバンドと話した事があったり対バンした事あったりするのは自慢じゃない。本当に。
数年前に大塚のキャパ200くらいのライブハウスで肩を並べて対バンしてたバンドのMVが、会社の飲み会の二次会のカラオケのDAMチャンネルで流れてきた。絶望。あれ、俺置いて行かれてるじゃんみたいな。あの時一緒にライブしてたじゃん!俺のギター好きって言ってくれてたじゃん!ギタリスト抜けるから代わりに入ってくれない?って誘ってくれたじゃん!まああそこで俺が首を縦に振ってたら、俺にもそのバンドにも違う未来が待っていたのかもしれない。なんで断ったんだろう。そういうプライドとかあったのかもしれない。心は一生思春期。それがロックンロール。多分違うけど。

多少音楽聴く人なら大概知ってるだろうな、みたいなバンドやシンガー。結構な数対バンした事がある。一緒に飲んだ事だってあるし、相談に乗った事もある。最初に言ったけど、でもそれは自慢じゃなくて絶望です。

話を戻して、「本気で音楽やりたいならプロになんてなっちゃ駄目だよ」というメジャーバンドのセリフ。
彼らの音楽は、そう、めちゃくちゃ格好良かった。Led Zeppelin好きなんだろうな、みたいな。ルーツもハッキリしていたし、ハッキリしている上で有無を言わせぬ実力と斬新さもあった。音楽が好きすぎて音楽に対して厳しくなった俺だけど、文句無しにカッコ良かった。メジャーデビューしてるのも納得。これがロックだ!みたいなとこがあった。

で、さっぱり売れないんですよね。
それはもう、売れない。俺は対バンしたから知ってるだけで、音楽詳しい人に名前言っても「誰それ?」みたいな。テレビで観たこともないし、ラジオくらいは出てたかもしれないけど、一般的な知名度はほぼ0。メジャーデビューとは…?みたいな圧倒的な絶望。

で、彼らは新曲を出した。それはもうクソみたいな楽曲だった。クソっていうのは俺の主観なんだけど。お前今までのLed Zeppelin愛はどこ行ったんだよ!Aメロ早口16ビート、Bメロでウォーウォー言いながら落としの重いメロ、サビで裏打ちポップンロールに盛り上がるぜこれで優勝!みたいな。お前はカナブーンか。
いや別にカナブーンが悪いとは思わない。彼らは凄いバンドだ。徹底して売れる音楽。盛り上がる音楽。フルドライブとかはカナブーンの集大成だと思う。初めて聴いた時、ああこれはスマッシュヒットするわって確信したし、実際した。有線でずっと流れてたし、カナブーンを追従すれば売れるだろうなとか思った。追従しなかったから実際に売れるかは知らないけど。とにかくカナブーンはすげぇバンドです。これは本当に思ってるしマジで尊敬してる。でも全然好きじゃない。

とにかく。カナブーンの良し悪しとかは個人の主観に任せるとして、少なくともそのメジャーバンドの音楽はカナブーン的ではなかった。のに、そういう音楽を作った。で、悲しい事に売れた。売れたっていうのも、日本の誰でも知ってる!みたいなバカ売れではないけど。知ってる人は知ってるよね、みたいな。とにかくそのバンドの市場規模からすればとんでもなく売れた。具体的に言うと今までの43倍は売れた。これを足がかりにしてこういう音楽を作っていけば音楽一本で食っていけるね!というところに彼らはきた。で、彼らは音楽をやめた。その時に言ったセリフが「本気で音楽やりたいならプロになんてなっちゃ駄目だよ」です。

彼らは好きな音楽で売れなくて、次出した曲も売れなかったらクビだから、みたいなところまで来てた。で、売れる為の曲を作った。そして売れた。それに対して絶望して音楽をやめた。ちなみに今は普通にサラリーマンやってます。コピー機とか売って、家族と幸せに暮らしてる。この記事を書くにあたって許可を貰ったけど、名前は絶対出さないでと言われているので誰に聞かれてもバンド名とかメンバーの名前とか特徴とかは一切言う気はありません。聞かないで。
彼は自分のやりたい音楽は世間に求められていないって事をリアルに感じてしまった。それってとても辛い事です。だって音楽やってる人ってだいたい自分のやってるもんが正解だと思ってるし、自分が聴きたい音楽をやってる。そうじゃない人もいるんだろうけど、だいたいはそう。売れようとして売れてる人以外は基本的にそう。

悲しいけど、音楽ってビジネスです。売れたものが大正解。売れなかったものは誰にも知られずにブックオフで10円とかで売られる。いやそれでもマシな方。多分知らないところでゴミになってる。ライブハウスのトイレとかに落ちてる知らないバンドのフライヤーと同じ扱い。
自分のやりたい音楽がたまたま売れるものだったという奇跡は、俺みたいな時代錯誤の音楽好きには基本的にありえない。そういう乖離を圧倒する実力もセンスもない。だからどこかで狡い考え方をして、やりたい事と売れる可能性、ビジネスの可能性をミックスして、ギリギリ妥協出来るところでやっていくしかない。それってすごく悲しいじゃない。

俺みたいなアマチュアバンドマンは、ライブ1回するのにも金がかかる。それは2万円だったり3万円だったり4万円だったりする。そういう大金を払って、お客さんより自分たちと対バンのメンバーの総数の方が多い、みたいなこの世の悲しみを凝縮した空間でマーシャルからデカい音を出したりしてる。もちろん長くやってるから黒字になった事もあるし、金貰ってライブした事もある。でも基本的には赤字。金のかかる趣味。いい歳した社会人が月半ばで残金6000円という非情すぎる現実。信じられない。誰か助けてくれ。

そういう切羽詰まった生き方の先にデビューという希望があるんだけど、デビューしてもそれが正解かはわからないよって部分にこの業界の絶望が詰まってる。多分音楽なんてさっさとやめて、コピー機売って稼いだお金で家族とディズニーランド行ってその様子をFacebookに投稿して50くらいのいいね!貰う人生の方がずっと幸せだと思う。これは本当にそう思ってる。俺もそういう人生が良かった。どこで間違えたんだろう。多分中古で42000円のフェンダージャパンの赤いストラトキャスターでEコードを鳴らしたあの日くらいからです。多分ね。

何が言いたいかって、音楽をやるって絶望だよねって話。でもめっちゃ楽しい。仕方ない、本当に。馬鹿なんじゃないのかなってたまに思う。「絶望的なこの道を、私は歩いていくしかないのだ」ってフランツ・カフカも確か言ってた。そういう気持ちです、最近は。こういう風にしか生きられません。いつかライブ来てね。それでは。